橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ヴェローナ ロメオの家?「オステリア・アル・ドゥーカ」

classingkenji2008-07-30

野外オペラをみた翌日は、市内をいろいろ歩いて観光したあと、ヴェローナの郷土料理をいただこうと、このリストランテへ。ここはシェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」のロミオの生家ともいわれている。もうひとつ、ジュリエットの家とされている建物もあり、こちらはお話のイメージに近いバルコニーがあることもあり、ヴェローナ最大の観光スポットのひとつになっている。見物客は若者が多く、近くの壁は二人の仲が永遠に続くように……というような内容の落書きだらけ。もともと架空の人物だから、生家が特定できるはずもないのだが、これはPRの勝利。これに対して、このレストランの方は、店の前にはさりげなく作品中のセリフを書いたプレートがあるものの、わざとらしい宣伝は皆無。料理も、地元の飾らない郷土料理が中心で、値段も2皿のコースが14ユーロと良心的。「ロメオの家」と銘打って宣伝すれば、大儲けできそうなものだが。この姿勢は、好感が持てる。
ヴェローナは馬肉料理が名物とのことで、これを中心に、鴨肉やロバ肉の料理などをいただく。写真は、馬肉のタルタル。最低限の味付けしかしていないものに、塩や胡椒、マスタード、ケッパーなどを好みに応じて混ぜていただく。まったく臭みなどはなく、純粋な肉のうまみを味わえる。ワインは、地元の銘酒、ヴァルポリチェッラ、そしてアマローネ。ぜいたくな昼食をいただいて、ヴェローナをあとにした。(2008.7.21)