橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

パリ カルチェ・ラタン「ル・アイルランデーズ」

classingkenji2008-07-25

アパルトマンのすぐ近く、先日は革命記念日前夜のお祭り騒ぎを見に行った広場に面したところにあるアイリッシュパブである。アイリッシュパブといっても、ギネスとキルケニー、そしてアイルランド風のメニューが少々あるというだけで、実質的にはカフェーである。英国から来たばかりなので、ついついカウンターまで行ってキャッシュ・オンで注文しなければならないような気になってしまうのだが、テーブルに着けば注文を取りに来てくれて、会計は最後。フランスのカフェでビールを注文すると、びっくりするくらい不味いことがある。明らかに乳酸菌に汚染されていたり、テーブルに届いた時点ですでに泡が消えいたり。フランスにおけるビールの地位の低さを物語るものといえるが、この店のビールはうまい。ただし、アイリッシュパブらしくパイント単位のギネスとキルケニーは、1パイントが7.6ユーロ(1280円)。パリのカフェは、酒を飲むというよりは、話をしたり読書をしたりする場所という性格が強く、もともと安くはない。しかもここは、英語を話す観光客がいつもうろうろしているような場所だから、日本のバー並みに高い。まあ、一杯だけ飲んでくつろいだり、仕事をしたりするには使える。広場に面したテラス席は、なかなか気分がいい。(2008.7.15)