橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ストラトフォード・アポン・エイボン「クイーンズ・ヘッド」

classingkenji2008-07-08

1泊2日で、ストラトフォードへ。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「夏の夜の夢」をみるのが主目的だったが、当然ながらパブにも。最初に入ったのが、この店。
英国のパブにはいろんな名前があって、思わず笑ってしまうことが少なくないが、この店の看板は、これはないだろうというほどブラック。死刑執行人が女王の首をマサカリでぶった切り、髪の毛をもって高く掲げている。英国には、実際に女王がこのようにして処刑されたことがあり、その場面はポール・ドラロッシュの「レディ・ジェーン・グレーの処刑」という作品で描かれている。所蔵している英国美術館へのリンクを張っておくが、「あ、あの絵か」と思い当たる人も少なくないだろう。ちなみに実物はロンドンへ行ったときにみたが、その印象は強烈。この美術館最大の見物かもしれない。パブにこんな名前をつけ、さらにはこんな看板まで掲げてしまった主人は、熱烈な共和主義者なのか、それともたんにユーモア感覚が強すぎるのか。店内は普通のパブで、この日の客はみんなビールを飲みながら、シャラポワの負け試合に見入っていた。(2008.6.26)
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