橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

御徒町「蔵串」

classingkenji2007-12-11

本郷の東大で研究会の後、串焼きが食べたくなって御徒町へ。御徒町のガード下は、意外に串焼きの店が少ない。あるにはあるのだが、ビールがスーパードライでホッピーがないという店だったりして、選択に困る。と思っていると、ガードをくぐって少し行ったところに看板が。新しい店らしい。入ってみて、既視感にとらわれる。店の雰囲気も、メニューも、「日本橋紅とん」そのままである。注文してみると、味も同じだ。後で調べてみると、少し前まではたしかに「日本橋紅とん 御徒町店」だったらしい。独立したということか。しかし、独立しても同じ仕入れで同じメニューということがありうるのか。「日本橋紅とん」のHPによると、直営10店、FC6店ということなので、FCからさらに独立性を強めた協力店というような展開でもあるのだろうか。
最近、チェーンのもつ焼き屋が元気だ。いずれも、若者たちでにぎわっている。ホッピーともつ焼きといえば、場末のC級オヤジの記号のようなところがあるが、最近は変わってきているのかもしれない。あるいは、かつての労働者居酒屋の伝統が、いまやフリーターの若者たちに引き継がれたということだろうか。(2007.12.5)