橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「魚真」

classingkenji2007-10-29

今日は東京国際映画祭で渋谷のBunkamuraへ。今回の映画祭には「映画が見た東京」という企画があり、見たい作品がいくつかあった。「東京五人男」(斉藤寅次郎・一九四五年)など、敗戦直後の作品でビデオ化もされておらず、ぜひ見てみたかったのだが、都合がつかず断念。今日見たのは「野良犬」(黒澤明・一九四九年)、そして「ニッポン・シネマ・クラシック」という企画の一本として上映された「カルメン故郷に帰る」(木下恵介・一九五一年)である。「野良犬」はビデオで何回か見ているが、当時の東京の風景を克明に捕らえた作品だけに、いちどスクリーンで見てみたかった。期待に違わず、いくつか発見があり、最後の格闘の場面など、草むらの匂いがしてきそうにリアルだった。「カルメン」の方は、初めて見た作品。高峰秀子の歌がうまいのに驚く。日本初のカラー映画だが、けっこう画質がいい。ただし、英語字幕入りのため、字幕に気をとられて声が聞き取れなかった箇所があったのが残念。
映画のあとは、すぐ近くの「魚真」へ。この店は、経堂の魚屋の経営で、下北沢店については以前取り上げた。この店もメニューはほぼ同じで、美味しい魚がリーズナブルな価格で食べられる。しかも今日は、七時までに注文すると刺身盛り合わせが半額とのこと。この店の刺身盛り合わせには普通と極上の二種類があるが、半額だから当然、極上の方にする。ミル貝、カワハギ、目鯛、インドマグロ、鯖、平政、生ウニが盛り込まれ、いずれも美味。ほかにも煮物や焼き魚など食べ、ビール、日本酒、焼酎といろいろ飲んで、二人で八〇〇〇円以内に収まった。文化村通りの左側を歩き、東急の真ん前あたりで左に入ったところ。すぐ満員になるので、六時を過ぎるようなら予約した方がいい。(2007.10.22)