橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「天狗」東京駅前店

classingkenji2007-10-01

東京駅近辺で食事をと店を探したのだが、月末の金曜の夜だけあって、心引かれるような店は満員。こんな時にハズレがなくて頼りになるのは「天狗」である。ここは、東京駅にいちばん近い「天狗」。地下にフロアが二つあり、合わせるとけっこう広い。秋に入って、生牡蠣を置くようになった。ここの生牡蠣はニュージーランド産で、臭みがなくクリーミー。キム・クロフォードのソーヴィニョン・ブランとの相性がいい。このワインは、ボトルで二二八〇円。シャブリが一八八〇円だから、この店としてはかなりの「高級ワイン」だ。ネットで買っても、ほぼ同じ値段。新世界らしく濃厚で、まるでリースリングのように香りが強い。ようやく、秋めいてきた。スーツにネクタイ姿のサラリーマンが増えた。サラリーマン五人組の後ろの壁の上着掛けに、ほとんど同じ色、同じ生地の紺色の上着が五つ並んでいるのを見て、つい笑ってしまう。仕事の愚痴を大声で言い合っている五〇代の二人組も。若いカップルもちらほら。今日は食べなかったが、秋の「天狗」では松茸の土瓶蒸し(三八〇円)もおすすめ。多少の化学調味料臭さえ気にしなければ、まあまあ美味しく酒が進む。
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