橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「灯串坊」で「魔王」を飲む

classingkenji2007-09-30

焼酎好きなら誰でも知っている、鹿児島は白玉醸造芋焼酎「魔王」。「幻の焼酎」として知られ、量販店やネットショップでは一升瓶が二万円、四合瓶が一万円ほどで売られていることがある。しかし「灯串坊」では、普通の値段でボトルキープできる。正確な額は忘れたが、おそらく四五〇〇円程度だろう。ただし、時々しか入荷しない。常連になって通えば、たまにお目にかかるという程度である。確かに、美味い焼酎だ。ほのかに芋の香りがするが、それ以上に澄んだ果実のような香りが前面に出る。以前どこかの居酒屋で一杯一〇〇〇円ほどで飲んだことがあるが、こうしてボトルから自分で適量を注いでゆっくり飲むと、その真価が分かる。しかし、最近の焼酎は飛躍的にレベルが上がっているから、近いレベルのものは他にいくつもある。運良く、まともな値段で出す店に巡り逢ったときに楽しむのがいいと思う。串焼きは、シロのタレ焼き。芋焼酎にいちばん合うのは、やはりこれだろう。