「タカダワタル的」(タナダユキ監督・2003年)
私が高田渡を知ったのは、比較的最近のことである。演奏そのものは若い頃から耳に入っていたのかもしれないが、それが名前と結びついたのは数年前だろうか。惜しいことをした。彼はほとんど毎日のように、吉祥寺の「いせや」で飲んでいたという。もう取り壊されたあの建物で、彼が酒を飲む姿を目に焼き付けておきたかった。この映画は、彼のステージでの演奏とともに、吉祥寺界隈で散歩する姿や、開店前の「いせや」本店、あるいは日差しのまぶしい井の頭公園店の窓際で飲む姿(写真)を捉えたもの。微笑ましい場面も多い。演奏中の高田のところへ、観客が飲めとばかりに酒をもってくると、高田が「お通しは」と応じる。野外コンサートで演奏の合間に酒を飲んでいると、観客が「飲み過ぎるなよ!」と野次を飛ばし、会場は笑いで包まれる。いい曲が多い。演奏では、ギターが力強く、そしてなにより声がいい。死の一年ほど前に行われたインタビューの記録をあわせて読めば、感慨もひとしおである。
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