橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

酒とつまみ編集部編『酔客万来』(酒とつまみ社・2007年・1600円)

高田渡つながりで一冊。「酒とつまみ」という雑誌については、別のブログで紹介したことがある。全編酒の話だけという雑誌で、「中央線で行く東京横断ホッピーマラソン」「7時間耐久立ち飲みマラソン」など奇想天外な特集をやっている。本書は、この雑誌に連載されているインタビューを五本まとめたもので、登場するのは、中島らも井崎脩五郎蝶野正洋みうらじゅん高田渡高田渡は漢字をネタにしたうんちくと冗談が半々の話題がぽんぽん飛び出し、インテリジェンスと柔軟な発想をうかがわせる。最後のページには、居酒屋でのインタビューのあとで撮ったという写真。雨の日の井の頭公園の夜桜をバックに、高田が立っている。彼にとっては最後の夜桜だったろう。ぜひ、カラーで見たい一枚だ。その他では、井崎脩五郎が印象的。話題豊富で話し上手だが、サイレンススズカの最後のレースの話で涙を浮かべるところを読むと、この人はほんとに馬が好きなんだなと思わせる。一六〇〇円はちょっと高いかもしれないが、酒の上での馬鹿話の好きな人と、高田渡が好きな人はどうぞ。ただし、けっこうお下品な話題もあります。
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