橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

三軒茶屋「でこ」

classingkenji2007-08-27

三軒茶屋の交差点からキャロットタワーの方へ一本入ったところに、「すずらん通」という飲食店街がある。入り口には、恵比寿様らしき顔が二つ並び「喰うてかへんか」という文字が入った、ユーモラスなゲートがあるからすぐ分かる。昭和の雰囲気の漂う一角で、なかなかそそられる飲み屋が何軒かあるが、今日はあまり時間がないので、立ち飲み屋に入ることにする。「でこ」は比較的新しい店だろう。若者が経営する店で、立ち飲み屋と言ってもちょっとおしゃれな感じ。料理は焼き鳥がメインで、もも、かわが一〇〇円、ればー、せせりが一五〇円。「とんちんかん」というのはなんこつ入りのつくねで、一二〇円。何と、ここにもホイス(三五〇円)がある。キャベツ、枝豆など軽いおつまみが一〇〇円から二五〇円。ホッピーが三五〇円、中と外がいずれも二〇〇円と下町価格。駅前一等地に店を借りてこの値段じゃ儲からないだろうと、ちょっと心配になる。生ビールはプレミアムモルツで、四八〇円。焼酎が五種類(三五〇−四八〇円)、日本酒のワンカップが二〇種類ほど揃い、六〇〇円。客は、けっこう若者が多い。凸と書いて「でこ」と読ませるが、実は近くには凹と書いて「ぼこ」と読ませる、やはり立ち飲みのワインバーがある。久仁のような店もあれば、おしゃれ系立ち飲みもある。世田谷とはいえ都心感覚の街、三茶ならではのラインナップだ。