橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「太田尻家」

classingkenji2007-07-19

経堂駅から北側に出て、すずらん通りを行く。五分ほど歩くと、左側に「灯串坊」があり、さらに三分ほど歩くと、右側にこの店がある。店名は「おおたじりけ」と読む。太田さん・田尻さんのご夫婦が二人で営むことから付いた名前である。店のインテリアは、椅子・テーブルはもちろんのこと、厨房や床まで、田尻さん(旦那さま)の手づくり。そこに、造形作家である太田さん(奥さま)の不思議な作品が上から吊されたり壁に取り付けられたり。建物の外観も含め、まさに世界でここだけのオリジナルな店作りだが、何ともいえないほのぼのとした雰囲気に浸ることができる。そういえばご夫婦ともほのぼのしたお人柄だし。そんなわけで、二軒目または三軒目に立ち寄ることが多い。先日は四軒目にお邪魔したらしいのだが、記憶がない(笑)。
料理はすべて、田尻さんの手づくり。モツのオリーブオイル煮、豚巻きもやし、ポテトサラダ、バジルエッグ、薄焼きチーズ、ラム餃子など、無国籍の料理はほとんどが三〇〇−五〇〇円で、どれもおいしい。お通しは出てくるが、チャージはない明朗会計。日本酒と焼酎が、いずれもグラスになみなみと注がれて五〇〇−六〇〇円。グレンリベット(12years)、バランタイン(12years)、タラモアデュー、ジャックダニエルがシングル五〇〇円、ダブル六〇〇円。コーヒー豆を漬け込んだチークウォッカキンカン酒などのオリジナルも、五〇〇−六〇〇円。生ビールはカールスバーグで、ピルスナーグラスが五〇〇円。
客は地元の自由業者やフリーターなど、店に似て何となくゆるい感じの人が多い気がする。それとも、この店に入ると、誰もがくつろいでしまうからそう見えるのか。経堂に来ることがあったら、ぜひ立ち寄ってみてください。太田尻家のホームページに地図があります。