橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

小岩「大竹」

classingkenji2007-06-30

今日は、高校への出前授業で亀戸へ。亀戸周辺の居酒屋でも、と思ったのだが、まだ五時前ということもあって、これといった店が見つからない。そこで下調べしておいた平井の「松ちゃん」を目指したのだが、あいにく水曜日は定休。仕方がないので小岩まで行き、駅周辺を物色した末に「大竹」へ。まだ五時半過ぎだというのに、外にまで客があふれている。いかにも下町のもつ焼屋といった風情である。一〇人くらい座れそうな外の席を横目に中へ入ると、右側に並行カウンター、左側にテーブル席。
串焼きはタン、ナンコツ、カシラ、シロ、レバ、ガツ、ネギマなど、いずれも一〇〇円で二本から。とりあえずとカシラを二本注文したが、出てきた肉の大きさにびっくり。普通の二倍以上あるのではないだろうか。しかも、カシラといっても通常は「アブラ」と呼ばれる部分と一体になっている。肉の一片を噛むと、肉汁と脂が口に広がる。うまい。普通のカシラとは違うが、カシラ好きの私としては、これまでのベスト五に入れたい。シロも尋常ならざる大きさ。四本でかなり満足感が味わえる。飲んだのは、一杯三〇〇円のハイボール。天羽乃梅を使った正統派ハイボールで、氷は入らない。ただ、少々冷え方が不足なのが残念。サッポロの中生が四〇〇円、レモンハイが三五〇円。トマト、ぬた、冷や奴、もろきゅうなど、肴の多くは三〇〇円である。
カウンター席には、五−六〇代の男性の一人客が多い。六〇代が五人、五〇代が二人、四〇代と三〇代が一人ずつ。そして小さな女の子を二人連れてきた三〇代のお父さんと、工務店関係らしい三〇代から五〇代の四人連れ。ジャケットにノーネクタイの六〇代が一人いる他は、全員カジュアル姿である。テーブル席には、三〇代のカップル、四〇代男性三人組、五〇代女性二人組で、いずれもカジュアル。外には、六〇代のご夫婦、三〇代男性二人組のほか、若者もいる。ちょっとおしゃれな二〇代男性二人組と、Tシャツにジーンズの二〇代女性三人組が楽しそうに飲んでいる。
モツ焼きの持ち帰りを求める客がひっきりなしに訪れる。こんなに安くてボリュームがあれば、夕食の定番になりそうだ。お新香を頼んだら、たくあん、野沢菜、キュウリ、白菜、ミョウガの五点盛りだった。ミョウガの赤が美しい。こんな店が沿線にあったら、週一回くらいは行くだろう。大衆酒場は、やはり下町に限る。(2007.5.25)