橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

サッポロホールディングス株主総会

classingkenji2007-03-29

実は株主なので、行ってきた。ずいぶん注目されている。ご覧の通り、会場前にはマスコミの取材陣がひしめき合っている。
結論から言うと、今回はスティール・パートナーズ・ジャパンが逃げた。注目の第7号議案(会社提案)と第8号議案(スティール提案)についての審議の冒頭、緊張が高まる中でスティールを代表して出てきたのは、まだ二〇代かと思われる若者。自分は代理人であり、これから意見書を代読するが、質問に答える指示は受けていないと前置きした上で、意見書を棒読み。棒読みはある程度仕方がないとしても、内容をよく理解していないのが見え見えのたどたどしい口調。この時点で、勝負は見えていた。この後、会社側に好意的な発言がいくつかあった。そのうちの、一つ。「私は日本人ですから、外資は嫌いです。スティールって何ですか。まさか、盗むという意味じゃないでしょうね。あ、鉄という意味ですか。そうですか。」会場、ばか受けである。
そういうわけで拍子抜けだったが、それよりも最初の事業報告のところで出た質問や意見が、面白かった。
「サッポロは宣伝が下手だと思います。だって、どうして石塚英彦くんなんですか。メタボリックというのが問題になってるときに、よくないんじゃないですか。」ごもっとも、私もそう思う。
黒ラベルの味が変わって、美味しくなくなったと思います。どうして味を変えたんですか。それとも、美味しくしようとして、変えたら、美味しくなくなってしまったんですか。」きつい質問だなあ(笑)。
「群馬の山奥に住んでいます。このあいだ高崎に行って、ライオンに行こうと思ったら、閉店していました。どうしてですか。」そりゃ、ショックだよなあ。
「最近、新聞のビールの記事を見ると、キリンとアサヒのことしか書いてありません。じり貧です。絶対に、サントリーには負けないでください。」まったく、その通りです。
出席者は、サッポロや株主企業の関係者かと思われるサラリーマンと、個人株主と思われる中高齢者や、私のような自由業風が半々くらいだっただろうか。発言の大部分は、個人株主から。サッポロビールが好きだという思いがにじみ出る発言が多かった。役員たちにも、ずいぶん励みになっただろう。ちゃんとがんばってくれ。(2007.3.29)