橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

米投資ファンドがサッポロ買収?

スティール・パートナーズが、サッポロホールディングス株を825円で保有比率66.6%まで買い増したいと、同社に提案したことが報道されています。790円前後の値を付けていたこの株を、買収にしては低い水準でTOB提案したところに、スティールの意図は見え見えです。どこかがサッポロの支援に名乗りを上げて、あるいは名乗りを上げなくても、株価が上がったところで売り抜けようというのでしょう。明星食品に味をしめて、二匹目の泥鰌を狙うというわけです。案の定、今日の株価はストップ高の状態。最後になって891円の値が付き、出来高は昨日までの約2倍の水準で、発行株式の1%以上が一瞬のうちに売買され、しかも出来高の4倍の買い注文を残しました。こんなファンドに濡れ手に粟の巨額利益を出させてはいけません。その利益は、結局は日本の消費者が負担することになるのです。仮に買収に乗り出したとしても、同社の株を38%買い増すためには1200億円もの資金が必要で、このファンドの能力ぎりぎりでしょう。サッポロは営業力が決定的に欠如していますが、美味いビールを造る技術については他社も一目置いているはず。日本のビール文化を守るため、食品業界全体が結束してほしいものです。