橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「灯串坊」

classingkenji2007-01-10

夕食の後、どうしても串焼きが食べたくなって「灯串坊」へ。いつもの通り、カシラ塩と白タレを注文し、焼酎をロックで飲む。焼酎は、キープしてあった「山ねこ」。一杯分しか残っていなかったので、長崎で麦焼酎の味に目覚めた私は、「中々」をボトルでとることにする。これまで、焼酎といえばたいてい芋か泡盛しか飲まず、麦焼酎は、「兼八」など一部の例外を除けば、クセがなさ過ぎて甲類焼酎とあまり変わらないくらいに考えていた。そうではないことを知らしめてくれたのは、先の九州旅行で飲んだ壱岐焼酎だった。この「中々」、有名な「百年の孤独」を作っている黒木本店の酒で、ごく普通の値段の焼酎だが、一部の酒屋では二倍程度のプレミア付きで売られている。口当たりは軽いが、しっかり麦焼酎の香りがする。ロックが良く、塩焼きに相性が良い。
というわけで、追加でカシラと白を塩で焼いてもらい、記念撮影。どうです、この串焼きの色つや。ちなみに、ボトルの私の名前の上にある山二つは、猫の耳のつもり。私の名前は比較的ありふれていて、同じ店の常連に二人いることが少なくないので、区別のため付けることにしている印である。
今日の客はすべてカジュアル姿で、五〇代男性二人(ただし、たまたま一緒になっただけらしく、一人は途中で帰った)、三〇代のカップル、そして四−五〇代男女混成の四人組。根を生やした地元民らしく、近所のラーメン屋の味など批評している。串焼き六本、新規ボトル一本で、本日の勘定は四四五〇円。消費税と付け出しを考えると、たぶんボトルは、三五〇〇円くらいだろう。(2007.1.7)