橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「斎藤酒場」

classingkenji2006-12-12

今日は私の掲示板「居酒屋とり橋」のオフ会で、「斎藤酒場」へ。折からの雨と寒さの中、五時に十条駅に集合。これなら余裕で入れると考えていたのだが、甘かった。店内はほとんど満員。しかし、今日集まったのはわずか三人なので、店の人が一人客に少し移動してもらって、なんとか席を作ってくれた。集まったのは、山城屋さん、「とり橋」の女将(つまり私の妻)、そして私。このほか、Liさんと紫式部さんが写真参加。二人の写真を机に立て、名物のポテトサラダと串カツ(各二〇〇円)、そしてにごり酒(一八〇円)をその前に置く。「何だかお供えみたい」という声も(笑)。この他、しめ鯖、アジ刺し、煮込みなどを注文。三時間ほど楽しく飲んで食べて、勘定は一人二一〇〇円ほど。いつもながら驚くほどの安さである。
週末の土曜日ながら、客層はふだんとほぼ変わらない。地元の中高年男性が七割ほどを占め、これに居酒屋好きらしい若者から中年のグループや一人客が加わる。異彩を放っていたのは、白いふわふわの帽子をかぶった女の子三人組で、地元の中年男性たちと同じテーブルを囲んで横一線に並んで座っていた。何かで読んでやって来たのだろうけれど、全然楽しそうに見えない。六時くらいからぼちぼち帰る客が出てくるが、代わりにやって来る客もひきを切らず、ほぼ満員のまま。やはりここは、東京居酒屋文化の中心地、原点、そして第一の札所とでも言うべきか。遠路からやって来ておきながら身勝手な言い方だが、よそ者たちにその空気を乱されることなく、いつまでも名店であり続けて欲しいものである。(2006.12.9訪問)