橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「マルキ市場」

classingkenji2006-11-29

韓国訪問ですっかり韓国料理にはまってしまい、今日は近所の「マルキ市場」へ。名前は経堂本店だが、住所は桜上水で、赤堤通沿いにある。このほか下北沢、吉祥寺、三軒茶屋など、全部で一〇店舗あるとのこと。
この店の特徴は入場料というシステム。店に来たというだけで一人八〇〇円がチャージされるが、その代わりに料理や酒の値段は安く設定されている。どれくらい安いかというと、五種類あるカルビは二九〇円からで、メインの「元祖カルビ焼き」は三四〇円、名物の瓶漬あばら肉が三九〇円、ロース、ギアラ、ホルモンなどが二九〇円、いちばん高いのがタンで五二五円、キムチは単品が一九〇円で、五種類の盛り合わせが三九〇円、生ビール(サッポロ黒ラベル)は中ジョッキで二九〇円、サワー類は一九〇円から。こういう値段なので、料理二品とビール一杯のみ、などという使い方さえしなければ、安く済ませることができる。肉は豪州産が中心で、一部国産もある。ケジャン、サムゲタン、チヂミ、冷麺、ビビンバなど、焼き肉以外の料理も豊富。フロアは広いが、店員は十分な数いて、手を挙げるとすぐに注文を取りに来るし、届くのも早い。
しかも、味がいい。この日に食べたものでいえば、カルビやあばら肉などの牛肉類、二八〇円のケジャンは、このあいだ食べた韓国の本場の味と比べてまったく遜色がない。キムチはやや劣るが、値段から考えれば十分コストパフォーマンスが高く、山芋やエリンギなど変わったものがあるのもいい。生ビールは、量・注ぎ方・鮮度とも合格点。マッコリは、先日韓国で飲んだ大量生産品より上だった。そして本日の勘定は、妻と二人で焼肉五皿はじめとしていろいろ食べ、ビール四杯、マッコリ一杯、焼酎一杯を含めて六九〇〇円ほど。こんなに安く、本格的な味の韓国料理店が近所にあるというのは心強い。
客層は、家族連れとカップルが中心で、みんな和やかに焼き肉を楽しんでいる。入場料で収益を上げるシステムだろうから、大食いの若者のグループなんかが来たら赤字になるだろうなと心配にもなってくる。贅沢をいえば、百歳酒と、もう少しましな赤ワインを置いてほしいものである。(2006.11.29訪問)