橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

ビールの味について

私はサッポロ党です。どこが好きかというと、まずホップの香りです。キリンラガーはホップの苦みは強いのですが、香りはあまりありません。アサヒスーパードライは苦みも香りもなく、ビールの味がしません。これに対してサッポロビールは、黒ラベルヱビスとも、ヨーロッパ大陸産ホップのフローラル&スパイシーな香りがします。
それでは、サントリーは? 昨日、仕事の帰りに知人と居酒屋に入り、サントリーモルツを飲んで驚きました。柑橘系の香りがします。これは、米国産のカスケードホップの香りです。エールタイプの地ビールではよく使われますが、淡色ラガービールにカスケードとは? ミスマッチですが、悪くはありません。リニューアルしたとは聞いていましたが、この手できましたか。しかしカスケードの香りのビールなら、ペールエールかアンバーエールが飲みたいですね。
さて、ビールと階級の関係について。『下流社会』の三浦展さんは『大人のための東京散歩案内』という本で、キリンは三菱系なので山の手ホワイトカラーのビールであり、サッポロは下町職人のビールだ、と書いています。たしかに、サッポロビールは下町の居酒屋でよく見かけます。珍しくなったサッポロの熱処理ラガーも、下町ではいまでもよく見かけます。東京中を飲み歩きながら、店においてあるビールの銘柄を地図にプロットして分布を明らかにする、というのは一度やってみたいテーマです。しかし、肝臓が持つかどうか・・・・。