橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

『おとなの週末』2010年11月号

おとなの週末』が快調だ。今月の看板特集は「大満足の居酒屋」。単に「いい店」を並べるだけでなく、企画にメリハリがある。取材で新たに見つけた新しい「名店」、広く知られている老舗をひととおり回っての再評価、創刊から九年間に掲載した居酒屋をひととおり再取材してのランキング、女性も楽しめる立ち飲み、ガード下の特集など、柱がはっきりしている。
しかも、けっこう評価は辛口。たとえば老舗の煮込みを評して、岸田屋は大量の脂が浮いてしつこい、山利喜は肉自体の旨みが乏しい、など。にわかに同意はしないけれど、こういう姿勢は悪くない。しかし、やたらと「覆面調査」と繰り返すのはいかがなものか。過去に掲載した店もあるし、写真まで載せるとなると取材許可を得ているはず。
他の特集では、「向田邦子が愛した昭和の酒肴と晩御飯」がいい。レシピも付いていて、作ってみたくなるものがいくつもある。

おとなの週末 2010年 11月号 [雑誌]

おとなの週末 2010年 11月号 [雑誌]