橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「希望の星」

classingkenji2010-09-29

「激安居酒屋」は、最近になって展開してきたチェーン店や新しい立ち飲み屋だけではない。以前から個人営業で頑張っている店がある。この店は、その典型のひとつだろう。
ビールは二五〇円だが、その他の飲み物はすべて一九〇円である。サワー類が一九〇円というのはさほど驚かないが、ホッピーセット一九〇円はすごい。ちなみに、中と外はそれぞれ一〇〇円である。外一〇〇円というのは、仕入れを下回っているのではないか。ビール類では、サッポロの「麦とホップ」が一九〇円。料理は、ホルモン類の炒め物、餃子、ポテトフライ、唐揚げ、肉豆腐など、ごく普通の居酒屋料理が並び、ほぼ三七〇円均一。注文するたびに店主が小さなキッチンで作ってくれる。家庭料理のような普通の味。量はかなり多い。池袋でこの値段。しかもバイトを一人雇って、生活していけるのかと心配になってくる。
最近の若者は、チェーン店の方が気安いのか、こういう個人営業の店には集まらないようだ。しかも、ビルの二階で、外からは中の様子がうかがえないから、ちょっと入りにくいかも知れない。というわけで、それなりに人は入っているものの、空席が目立つ。これは、穴場だと思う。池袋へ行くことがあったら、寄ってみるといい。(2010.9.2)

豊島区西池袋3-30-11
16:00〜24:00 無休