青森「新鮮市場」
翌日はまず、市場へ行ってみることにした。
青森には、ヤミ市から生まれた市場が二つある。駅前にあった市場団地は、海産物店を中心に一五〇店もがひしめく「青森の台所」だったが、一〇年ほど前に再開発で撤去され、「アウガ」というビルの地階に収容されてた。これが「新鮮市場」である。駅前通りに直結する階段を下り、ドアを開けると新鮮な魚の匂いに全身を包まれる。ほぼ正方形のフロアは、東西南北に路地が走り、売り場に木枠をかぶせただけの小さな店が建ち並ぶ。その数、およそ八〇店。地元で獲れる魚介類は何でも揃い、値段も安い。天井を見ずに歩いていると、ここがビルの中だということを忘れる。
その南側に、古川市場がある。こちらは古い木造の売り場がそのまま残り、魚や野菜、総菜などを売る市民向けの市場だ。地方都市の駅前は、とかく再開発して大きなビルを建て、きれいにしてしまう例が多い。青森はヤミ市時代の匂いを残す市場がほぼ原型のまま残る、数少ない例のひとつだろう。(2010.4.29)