青森「篤」
次に向かったのは、市街を南北に貫く柳町通りに面した「篤」。この店を訪れたのには、理由がある。
戦後、青森駅の駅前から南側にかけてヤミ市が林立し、市の復興を支えた。これが現在も残る市場の始まりである。ここで、新しい料理が生まれた。厳寒の中、青函連絡船に乗り込む人々を暖めるため、ある屋台の主人が、大量のおろし生姜を加えた味噌でおでんを食べさせることを思いついたのである。これが「青森おでん」の始まりだ。簡単な料理だけに、もともとは屋台か家庭で食べるものだったが、B級ご当地グルメブームで注目され、メニューに載せる居酒屋が増えている。そのさきがけが、この店なのである。
おでん種は、コンニャクと大角天(薄く大きい四角形の薩摩揚げ)の二種類。最近では卵や大根などを種に加える店もあるが、もともと青森おでんは、この二種類だけを串に刺して出すものなのだという(写真)。カウンター六席とテーブル二卓だけの小さな店は、地元客でほぼ満員。津軽弁が飛び交って、活気がある。地元客中心の大衆居酒屋だが、大通りに面したビルの一階だから、よそ者でも入りやすい。(2010.4.28)
青森市本町2-2-15 17:00〜24:00 日祝休