橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「銀座ライオン 銀座七丁目店」

classingkenji2010-01-02

今年の新年は、まず自宅で、金沢直送のかぶら鮨、鮴と胡桃の佃煮、膾、蒲鉾、伊達巻き、そして自家製の鴨治部煮などを肴に、「菊姫」のにごり酒をいただく。年賀状の返事を書き、しばらく休んだ後は、銀座へ。全国的には天気の悪い地域が多かったようだが、東京は快晴で、しかも暖かい。銀座には虎屋を初めとして、お年賀の品を売る和菓子屋が多く、けっこう賑わっている。向かったのは、当然この店である。
銀座ライオンが元旦から店を開けるようになったのは、一五年ほど前からだったと思う。当時は客も少なく静かだったが、最近ではすっかり客が増えた。もちろん、客層はいつもと違う。目立つのは、初詣帰りか、あるいはお年賀の品を買いに来た帰りと思われる、中高年夫婦と家族連れ。父親がビールを飲む横で、子どもがピザを食べていたりする。外国人のグループ客も多い。日本へ遊びに来てはみたものの、開いている店が少なく、この店に集まってくるのだろう。
一杯目は、スタンダードな黒ラベルを小グラスで。朝食でのビールを我慢してきただけに、感動的にうまい。次いで、ヱビス、黒ヱビス、そしてエーデルピルス。今年もうまいビールが飲める一年でありたい。(2010.1.1)