橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

かぶら寿し

classingkenji2009-12-05

金沢の冬の味覚だ。大きなかぶをスライスして、塩漬けにしたブリの切り身を挟み込み、麹で漬け込んだもの。繊細にして豊潤。ボディのある加賀の酒にも合うが、繊細さを生かすなら新潟や東北あたりの純米吟醸とも相性がいい。楽天で売っているのは、私の同級生が五代目の女将を務める四十萬谷本舗。発酵食品だから味はどんどん変わっていくが、売られているものは食べ頃を迎えつつある時期にあるので、すぐに、あるいは数日中に食べるといい。安いものではないが、それだけの価値はある。大根に鰊を挟み込み、麹に漬け込んだ大根寿しというのもあり、こちらはより庶民的な味である。