橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「砂の器」と「鳥竹」

classingkenji2009-04-06

二月二七日に、映画「砂の器」で丹波哲郎森田健作がやきとり屋でビールを飲むシーンについて紹介したが、この店について、居酒屋探偵のDAITENさんから情報をいただいた。このシーンに入る前に飲食店街が出てくるが、これは渋谷の井の頭線ガード付近で、さらに店内のようすが一瞬だけカメラにとらえられているが、そこで暖簾に「鳥竹」という文字がみえる。これは、渋谷の「鳥竹総本店」ではないか、というのである。あわててDVDを取り出して確認したところ、たしかに「鳥竹」と読める。暖簾の向こう側に看板があり、その文字が透けてみえるようでもある。ただ、渋谷のこの店は角地にあって変則的な形をしているのに、画面では長方形の普通の形にもみえるから、セットの可能性もある。しかし、いずれにしても一九七〇年代前半のやきとり屋のようすが記録されていることに変わりはない。