橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

フランスのワイン価格

classingkenji2008-08-09

フランスならワインが安いかというと、一概にはいえない。少なくとも、高級ワインについていえば、日本より安いとはいえない。ロマネ・コンティは、やはり100万円以上する。ラトゥールやムートン、マルゴーなどの格付けワイン、シャンパンなども、ほぼ日本と同じ。たとえば近所のスーパーではヴーヴ・クリコを32ユーロ(約5400円)で売っているが、日本でも安売りの店なら5000円前後で手に入るはず。しかし普及価格帯のワイン、とくにAOCワインの中の低級品は、びっくりするくらい安い場合がある。写真はその一例だが、ベルジュラック、ガイヤック、カオール、ボージョレーなど、高級とはいえないAOCは2-3ユーロ程度で、なかには1.5ユーロくらいの場合もある。楽天などでは、AOCワインを高級ワインと称し、12本9800円とか、1本880円均一などと売っているのをよくみるが、このようなAOCがたくさんあるわけだ。しかも、ワインの酒税が安い。100リットルあたり3.4ユーロだから、750ミリリットル瓶なら約4.3円。日本だってワインの酒税は安いのだが、それでも60円だから、比較にならない。ちなみにウイスキーやスピリッツは日本よりやや高く、日本では1500円前後のものを12-14ユーロ(2000-2400円)で売っているのをよくみかける。ビールは当然ながら日本より安く、いずれも500ミリリットル缶で、フランス産のクローネンブルクは1ユーロ、ベルギーのレフやヒューガルテン、ドイツ産のピルスナーなどは1.4-1.6ユーロくらい。オランダ産の見たことのないビールがよく安売りされていて、これは0.6ユーロくらいからある。ビールの酒税は、日本の110円に対して7円くらいしかかかっていないから、これは当然。カフェやレストランでは酒をかなり高く出せるようだから、その経営環境は悪くないはずである。というわけで、スーパーで500-1000円くらいのワインをいろいろ買ってきて、食事のたびに飲んでいる。とくにボージョレーは、ムーラン・ナ・バン、モルゴン、ブルイイなどの村名ワインでも1000円以下。日本とは比較にならないくらい安いので、ときどき買って飲んでいる。