橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

パリ「ラヴァン・グー」

classingkenji2008-08-10

実は、パリではあまり外食していない。日本の安居酒屋のようなものがなく、外食は高くつくうえに、近くの肉屋やスーパーで、いい食材と安いワインがいくらでも手に入るので、いつも自分で作ってしまうのである。しかしこの日は、知人と待ち合わせてレストランへ。かなり知られた店らしい。午後8時の開店に合わせて私たちが入った時は、まだ客がいなかったが、すぐに予約客で満員になった。メニューは、前菜、メイン、デザートからなる31ユーロのコースが中心。私は、前菜にバニラ風味でマンゴーソースといっしょにいただくフォアグラ(ただし、5ユーロ割り増し)、ポトフ、チーズをいただいた。この店のポトフ(写真)は、ただのポトフではない。とろけるように煮込まれた豚肉、よく味がしみこんではいるが食感を保った野菜が、マスタードと生クリームを使った黄色いソースの上に載せられ、さらに生姜の薄切りのフライが天盛りされている。これは家庭料理のポトフとはまったく次元の異なる一品で、実に美味しい。ポトフの変形というものを、いろいろ考えてみたくなる新しい経験だった。もちろん、和風のおでんの変形というものを考えてみてもいいわけである。ボトルワインは23ユーロから。(2008.7.25)

L'Avant-Goût
26, rue Bobillot 75013 Paris
Metro: Place d’Italie