橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

阿佐ヶ谷「吟雅」

classingkenji2008-02-05

知人の近藤さんが、これまで勤めていたあなご料理店「はかりめ」を辞め、独立して開いたのが、この店。阿佐ヶ谷一番街の一番奥の方、飲食店の灯りが切れかけてきたあたりの、左側にある。カウンター七席だけの小さな店だが、カウンターは広く、椅子も大きめでゆったり座ることができる。近藤さんはソムリエと唎酒師の資格を持つが、この店の中心は選りすぐりの純米酒である。いま店にあるのは二十数種類で、看板どおりにすべてが純米酒。いくつか挙げると、鶴齢・純米山田錦(八〇〇円)、隆・純米吟醸(八〇〇円)、義侠・純米山田錦(七五〇円)、すっぴんるみ子の酒・袋搾り六号酵母(八〇〇円)、秋鹿・純米吟醸にごり酒(八〇〇円)、諏訪泉・純米吟醸「満天星」(八〇〇円)、十旭日・純米吟醸雄町(八〇〇円)、竹鶴・純米「秘傳」(七〇〇円)など。酒に詳しい人なら、この品揃えに近藤さんのこだわりを見て取ることができるだろう。いずれも正一合のとっくりで供され、常温が基本だが、燗もしてくれる。ビールはアサヒのプレミアム熟撰とヱビスがあり、いずれも中瓶五五〇円。焼酎は富乃宝山、もぐら、ちんぐ、朝日などが五〇〇円。肴も飲み助好みのものが揃っており、イカの塩辛糀風味(四〇〇円)、エイヒレ(四〇〇円)、莫久来(五〇〇円)、手作り無添加明太子(五五〇円)、鴨ロースもろみ風味(七〇〇円)など。実はワインもあり、頼めばリストを出してくれる。ワインに合う洋風メニューもあり、手羽先のコンフィ(六〇〇円)、イタリアン風モツ煮(六〇〇円)、本日のキッシュ(六〇〇円)、ハモン・セラーノ(七五〇円)など。中央線沿線に住んでいて、日本酒が好きなら、ぜひ行ってみてください。(2008.1.31)

吟雅
杉並区阿佐ヶ谷南2-20-2
03-3312-9813
18:00〜1:30 日休