橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

立石「江戸っ子」

classingkenji2007-12-30

立石の居酒屋ツアーで外せないのは「宇ち多」と「江戸っ子」だろう。集合して最初は「宇ち多」へ向かったのだが、なんと5時前だというのにもう売り切れで閉店。恐るべし、「宇ち多」。そこでしばらく立ち飲みの串揚げ屋で時間をつぶし、5時20分頃「江戸っ子」へ。ところがこちらもすでにほぼ満員で、何とか隙間のテーブルに滑り込むことができた。地元客がほとんどの立石という土地柄、そして店の魅力がなせる技である。まずは、名物のハイボール(三〇〇円)を注文。色は薄黄色で天羽乃梅を使っているようだが、何か果汁でもブレンドしているのか、やや濁りがある。氷はなく、半月形のレモンスライスが二枚浮かぶ。すっきりしていて美味しいが、アルコールはやや強めで、何杯も飲むと酔っぱらいそうだ。煮込みはシロを中心に何種類かの部位が、白味噌を使った薄味の汁で煮込まれたもの。そして焼きとん(四本二八〇円)は、大ぶりかつジューシーで、実に美味しい。とくに、アブラに近い部分をつかったカシラは絶品だった。店内は客であふれかえっているが、「葛飾天童よしみ」と呼ばれているという女将さんを中心に、チームワークよく働く店員さんたちのおかげで、注文はスムーズに通っていく。休日ということもあろうが、客のほとんどはジャンパーや化繊のダウン風ジャケットを着た中年男性。次は一人で来て、カウンターに座りたいものだ。(2007.12.22)