橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「わん」池袋東口店

classingkenji2007-10-24

「古典酒場」座談会のあとは、池袋へ。今年三月に卒業した教え子たちが集まって飲み会をしているというので、駆けつけることに。東口のマツモトキヨシの前で待ち合わせ、迎えに来てくれた女の子に連れられ「わん」へ。感心なことに、急用の入った一人以外は全員来ている。どこかの学年とは大違いの結束力だ。みんな、卒業してまだ半年だが、それぞれ少しずつ変わっている。髪が少し伸びて大人っぽくなった女の子や、社会人らしい落ち着きが出てきた男の子など。何人かは「学生に戻りたい」などとのたまっている。やめなさい(笑)。
さて、この居酒屋。「オーイズミフーズ」という会社の経営するチェーン店で、関東を中心に関西から北海道まで約一〇〇店舗を展開しているらしい。「ネギトロの生春巻き」「サーモンとアボカドのカルパッチョ」などの創作料理と、「みつせ鶏と茸のホイル焼き」「あさりの小鍋」など和風の季節料理を中心に、多彩なメニューが並ぶ。ビールはキリン一番絞りで、生五〇〇円、中瓶五八〇円。サワー類は四四〇円から四八〇円、カンパリオレンジ、スプモーニなどのカクテル類は五〇〇円から五八〇円。価格設定がやや高く、しかも細かく価格設定を変えている。懐具合が「中の上」くらいの若者を狙ったチェーンとといったところだろう。おしゃれな服装のカップルや女性二人組も見かける。ところが、ここにもホッピーがある。しかもメニューの冒頭、ビールの次の位置だ。ホッピー、恐るべし。セット四五〇円、外三〇〇円、中一五〇円という価格設定は、原価比例という感じでリーズナブルだ。最後には、記念写真を撮り、そのあとは大人の居酒屋を教えてやろうというわけで、人世横丁の「最上」に連れて行った。再会を約して帰ったのは、十一時頃だった。