橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

アメ横「やきとり文楽」

classingkenji2007-02-27

アメ横ヤミ市からうまれた商店街。その名前は、下谷引揚者更正会という引揚者団体が、飴屋を開いたことに始まるが、後には米軍の横流し物資や密輸品を多く扱ったことから「アメリカ横町」という意味も帯びることになった。現在でも店の中心は食料品と輸入品だが、ここにモツ焼き屋の並ぶ一角がある。いちばん有名なのは朝から酒が飲める「大統領」だと思うが、残念ながら満員。そこで向かいの「やきとり文楽」へ。店内は一杯で、街頭に並べたテーブルにつく。今年の冬は寒くないので、野外で飲むのも苦にならない。客は、スーツにネクタイ姿四割とジャンパー姿六割くらい。最初は入るのにちょっと勇気がいるかもしれないが、店員の女性たちはみんなやさしく、気後れすることはない。こんな場所でアメ横のにぎわいを感じながら飲むのは、なかなか楽しいものである。(2007.2.27)