橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「馬力」

classingkenji2010-12-13

今日は、仕事のあと池袋へ。どこか新しい店がないかと歩きまわり、見つけたのがこの店である。錦糸町の有名店の支店とのことで、本店を紹介した雑誌記事が店頭に張り出してある。悪くなさそうなので、入ってみる。
まずはホッピーセット(三九〇円)を注文して、メニューを眺めてみる。ちなみにホッピーは、55ホッピーも含めてすべて三九〇円で、中は一九〇円。ホッピーの安心価格の標準といえる。生ホルモン刺盛り合わせ、馬ホルモン刺、馬力豆腐、すじ煮込みといったあたりがおすすめのようだが、「馬鹿刺」(九八〇円)というのがあったので頼んでみた。馬と鹿の刺身を盛り合わせたとのことで、この店で最高価格のメニュー。いずれも上物とはいいかねる味だったが、ネーミングははいいし、気軽に鹿刺しを食べられる店は少ないので、頼んでみてもいいと思う。牛すじ煮込みは、ゼラチン質ではなく筋肉質の部分がほとんどで、期待した味ではなかったのが残念。こういうすじ煮込みが好きな人もいるかもしれないが。
苦言を一つ。店員が客とギャンブルの話に興じていて、自分がギャンブル店の店員をしていたときに、客の相手をしていかに儲けたかという自慢話をしている。客商売にふさわしい話題ではないし、そもそもギャンブルに負けた客が来ているかもしれないという想像力が働かないのか。まだ酒が少し残っているのに、次の注文を催促するのもやめてほしいものだ。(2010.12.2)

豊島区西池袋1-20-2
11:00〜翌7:00 無休