橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

早稲田「加賀屋」でヤミ市座談会

classingkenji2007-10-22

今日は古典酒場の座談会で、早稲田の「加賀屋」へ。ここへ来るのは前回に続いて二回目。「加賀屋」はチェーンとはいえ個人経営の色彩が強く、店によってかなりの違いがある。この店はビールはサッポロ、炭酸はニホンシトロン、焼酎はキンミヤと王道を行き、しかも美味しいオリジナル料理も多いという、優れものの「加賀屋」である。トイレには、写真のようなキンミヤ焼酎の能書きまである。
今日のお題は「ヤミ市横丁の居酒屋」。最近の私の専門分野だから、いろいろと話をさせていただいた。戦後のヤミ市を起源とする飲食店街はもちろんだが、ゴールデン街や人世横丁のように移転先の飲食店街の方が、むしろヤミ市時代の雰囲気を色濃く残している場合があり、同じように「ヤミ市横丁」と呼ばれるべきである。当時の化石または遺跡と呼びたい、もっともデープな店は有楽町・丸三横丁の「銀楽」だろう。今日新しく参加されたワイタベさんによると、店を切り盛りしていた老婆は、九〇歳と称しているとのこと。亡くなったら店は閉めるそうで、この貴重な遺跡もあと数年の命である。関心のある人は、ちょっと覚悟を決めてからどうぞ。他の皆さんは、二次会で中野方面へ。私は別件で、池袋に向かった。