橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中村橋「菜香村箸」

classingkenji2016-05-09

この日は大学からの帰りに、中村橋で飲むことにする。これまで1度くらいしか行ったことのない街で、まったくあてはなかったのだが、日本酒が揃っていそうなこの店に入ってみることにした。
入ると、壁一杯に張り出された日本酒メニューが目をひく。獺祭八五〇円、久保田千寿・〆張鶴大七・国権・開運などが七八〇円など。特別仕様の酒も多く、翠露・うすにごりが八五〇円、町田酒造・直汲み純吟が八八〇円など。品切れもあったが、保存状態は良かった。刺身がメニューの中心のようで、一品が一〇種類、そして盛り合わせが三種、五種、七種と三種類。三種盛り(一二八〇円)を注文すると、分厚く切られた本マグロ、カンパチ、鯛が出てきた。注文のときには好みを聞いてくれる。私は「サーモン抜きで」とお願いしたが、これはいいやり方である。
料理メニューはやや平凡だが、これだけ日本酒が揃っていれば文句はない。この日は地元のグループ客が大声を出して騒いでいたのが、少し気になった。これは練馬の居酒屋にはよくあることで、生活水準が低い方ではないが、お上品でもないという、この地域の特徴かもしれないと思う。帰り際には店員が「騒がしくてすみませんでした」と言ってくれた。(2016.4.15)

練馬区貫井1-7-28
16:00-22:00 月祝休