橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中野「味吉」

classingkenji2012-02-23

この店、いつから営業しているのだろうか。初めて入ったのは一五年ほど前だろう。日本酒初心者の連れに「いちばんコストパフォーマンスが良くて好みの酒」は何かと尋ねられ、そのとき飲んでいた静岡の「若竹鬼ごろし」だと答えた。すると、ちょうど店員がカウンターの少し離れた席に酒を運んでいって、待っていた客に「若竹鬼ころしでございます」という。思わず顔を見合わせたその客は、まださほど有名ではなかった頃の太田和彦だった。
店の雰囲気は変わらない。時代が移っただけに、ちょっと寂れた感じがする。酒の種類が多いのは相変わらず。当時はこれくらい多い店がいくつかあったが、今では珍しい。これほど多いと保存状態が心配だが、飲んでみた感じでは、あまり問題がなさそうだ。しかし、暖房費をけちっているのか、それとも酒の保存のためか、店内が異様に寒い。連れが凍えているので、少し飲んだだけで店を変えることにした。値段はリーズナブルだし、悪い店ではない。(2012.1.26)

中野区中野5-59-1
17:30〜25:00 無休