橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

西日暮里「喜多八」

classingkenji2011-04-04

今日は、出版社との打ち合せで日暮里へ。まずは名店「豊田屋」で刺身をいただいたあと、西日暮里まで歩いてこの店へ。
西日暮里は、何とも特徴的な地形の場所である。武蔵野台地の東端附近で、北は田端文士村のあった小高い丘、南はやはり谷中霊園の丘陵地だが、間にはさまれたこの辺りだけは、台地が蟻の塔渡りのように細くなっている。もっとも細くなったあたりには西日暮里公園があるが、その幅はわずか五〇メートル。東を見れば崖下に西日暮里駅、西を見れば急坂の下に住宅地。北側は切り通しになっていて、道灌山通りが通っている。線路の東側のガード下に飲み屋街があるが、この店はその中でも、見るからに酒飲みの好きそうな店構えで、満員盛況だ。
もつ焼きは一本一〇〇円で、他の料理は三〇〇円から四〇〇円がほとんど。サワー類三〇〇円、ホッピー三五〇円、ビール大瓶四五〇円など。何でも安く、料理は美味しい。西日暮里いちばんのお薦め店である。客は、サラリーマンが多い。西日暮里乗り換えのサラリーマンが、帰りに途中下車してくるのかもしれない。それだけの価値はある店である。(2011.2.25)