橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大分「こつこつ庵」

classingkenji2011-02-25

次に行ったのは、太田和彦の本でも紹介されている有名店、府内城址近くの「こつこつ庵」である。まず、外観に驚かされる。堂々たる切妻屋根の木造建築だが、正面の壁面が古いホーロー看板で埋め尽くされている。店内にも所狭しと飾られているが、最近流行のレトロを装った店にあるようなイミテーションではない。本物である。店主の松本じつおさんは、四〇年前にこの店を始める前、電気関係の仕事をしておられた。そこで電信柱に打ち付けられていた看板が、役目を終えて捨てられるのはもったいないと、店の装飾に使うことを思いついたのだという。
焼酎は、九州のものを中心に三〇〇種類もある。お客さんたちが立ち寄るたびに思いを書き残す落書き帳は、なんと三七七冊目。いかに親しまれている店であるかが分かる。りゅうきゅうの他、わた酢、キラスマメシ、だんご汁など、郷土料理の種類は多く、大分県全域をカバーしている。大分市では、この店は絶対に外せない。

大分市府内町3-8-19
11:30〜22:30 不定