清水「河よし」
次に向かったのは、駅から五分ほど歩いた場所にある「河よし」。店構えと内装に関する限り、冴えない平凡な居酒屋だが、メニューが違う。手の込んだ料理が二〇数種類あり、どれを試してみても、長年料亭に勤めたという主人の腕が冴えわたる。
たとえば枝豆豆腐は、摺った地の枝豆を出汁で伸ばして固め、オリーブオイルを垂らしたもので、素材を越えた味わいがある。いかワタ煮は、身の細切りを裏ごししたワタとともに煮込んで水分を飛ばしたようだが、まったく臭みがなく、身とワタの旨みが渾然となって舌を包み込む。そして、ぱらりと揚げた桜えびを飯に混ぜ込んでふわりと握った、おにぎりの見事なこと。しかも量が少なめとはいえ、たいがいの料理の値段が二〇〇円から三五〇円なのである。日本酒は、正雪、磯自慢、葵天下、国香など選りすぐりの地酒の純米大吟醸クラスが、五勺のグラスで五〇〇円から六〇〇円程度。料理と酒を味わうたびに意識が覚醒するから、ほろ酔いの状態から先には進まない。驚くべき店という他はない。
静岡市清水区江尻東1-5-6 17:30〜23:30 日休