橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

下北沢「八峰」

classingkenji2010-02-26

今日は仕事の帰りに、先日お会いした東京テレビの星野さんに教えられた、下北沢のやきとり屋へ。南口から坂をずっと下り、餃子の王将を過ぎた次の角で右に曲がったところにある。下北沢の飲食店街の、いちばん外れあたりになる。
表から見ると、何の変哲もない店構えだが、これは比較的改装されたからだろう。中に入ると、時の流れが作り上げた、熟成した居酒屋空間。下町の古い大衆酒場にワープしたような錯覚を覚える。暖簾に「やき鳥」とある通り、基本的には鶏肉の串焼きの店だ。自慢の品はつくねのようで、たいていの客がこれを注文している。ゆず風味とニラ風味があり、ゆずの黄色とニラの緑、そして焼き目のコントラストが美しい。
居心地の良さに身を任せメモもとらなかったので、値段の記録はないが、安い店だった。下北沢という地にありながら、この雰囲気だから客層は地元の中高年から若者まで幅広く、若者も含めて客は分を守りながら楽しく、あるいはしみじみ飲んでいる。若者の街の、大人の大衆酒場である。(2010.2.6)

世田谷区代沢5-33-3 
17:00〜23:30 火・第3水休