橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

上板橋「裕ちゃん」

classingkenji2010-01-27

板橋に住んでいた頃、私がもっとも足繁く通った居酒屋「もつ九」が火事で失われたのは、すでに書いた。春には再建・営業再開の予定だが、これに先だって娘婿が、すぐ近くに新しい店を出した。これが、「裕ちゃん」。一二月一六日に開店したというから、まだひと月経っていない。中に入ると、主人が「あ、先生」と、迎え入れてくれた。
カウンターとテーブル、奥には座敷もあり、「もつ九」より少し広い。メニューは、「もつ九」に似ていて、もつ焼きと刺身がメイン。値段も、ほとんど変わらない。もつ焼きは九〇円だし、揚げ物や炒め物が三八〇−四八〇円というのも同じ。強いていえば、ビールが中瓶四五〇円(「もつ九」は大瓶五五〇円だった)というのが違いか。ボトルキープした焼酎をホッピーで飲めるのも同じ。「もつ九」の常連客も来て、けっこう賑わっている。もつ焼きの売れ行きも良く、楽しみにしていたシロは、注文前に売り切れてしまった。
四月には「もつ九」が再開するので、強力ライバル同士ということになるが、メニューも味も共通だから、姉妹店ともいえる。周囲の居酒屋には、脅威だろう。大学から上板橋までは、電車を乗り継ぐと時間がかかるが、タクシーだと一〇〇〇円前後。たまには東上線方面に住んでいる学生を連れてくることにしよう。そのつもりで、甲類焼酎をボトルキープしておいた。(2010.1.6)

板橋区上板橋3-4-13
月休