橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

仙台「大衆酒場マイニチ」

classingkenji2010-01-18

二軒目は、最初に国分町近辺を物色した時から気になっていた、この店へ。定禅寺通沿いにあり、「全品300円」の貼り紙、そしてホッピーの貼り紙。仙台でホッピーが三〇〇円で飲めるとは……というわけで、入ってみる。店の前では、金のなさそうな若者のグループがメニューに見入っている。手前がカウンター席、奥には座敷がある。カウンターはほぼ満員で、座敷に通された。
全品三〇〇円といっても、料理は充実している。枝豆、さつま揚げ、冷奴、牛すじ煮、さば味噌煮などの定番の他、「本日のお刺身」として塩竃産のマグロ、金華山沖産のしめ鯖、そしてウニ、カンパチ、甘海老など。酒は、ビール小ジョッキ、サワー類、量産品の焼酎、プライベートブランドの日本酒、カクテル類、ウイスキー(ブラックニッカ)など、すべて三〇〇円。ホッピーは白と黒があり、作って出すスタイル。例外は地酒で、一ノ蔵四〇〇円、出羽桜五〇〇円など。さらに例外中の例外がひとつだけあり、店先のケースの中で動いていたオマール海老が、その場で茹でて一六〇〇円。残り一匹というので、当然これを注文。かなり大きいもので、中には身がぎっしりで、たいへんお得。
近くにだいぶ酔いの回っている中年男二人組がいて、オマール海老に食いついて話しかけてきた。近くに勤めるサラリーマンで、東京から来たというと、美味しい牛タン屋についていろいろ教えてくれる。駅の中の店やチェーン店はだめ、あの店が美味しい、この店が美味しい、この店ではお土産が美味しくて安い、など。たいへん参考になる。さらに同僚が一人加わり、いちだんと盛り上がったところで、礼を言ってお暇をする。旅先でのこんな出会いが、実は酒・料理探訪にはとても役に立つのである。(2009.12.24)

仙台市青葉区一番町4
17:30〜翌3:00 (土〜5:00) 日休