橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

伏見「藤岡酒造」「熊谷豆腐店」

classingkenji2009-12-29

午前中に仕事を済ませた後、京阪電車で伏見へ。今日は、私が店主を務めるバーチャル居酒屋「とり橋」の関西オフ会である。集まったのは、Liさん、紫式部さんのお二人。Liさんは約二年ぶり。紫式部さんは私の高校の後輩なのだが、卒業以来だから何と三二年ぶりだ。
まずは昼食場所へ向かうが、酒を出さないが持ち込みはできる店だというので、すぐ近くの藤岡酒造で酒を買うこととする。酒銘を「蒼空」という。五〇〇ミリリットル瓶がメインで、純米吟醸・山田穂とひやおろし純米の二本を求めて、「熊谷豆腐店」へ。最近できたという、料理も出す豆腐店である。
豆腐は、丸く盛り上げたざる豆腐が基本で、黒大豆、普通の大豆、青大豆と三種類がある。まずは冷奴、次いで揚げ豆腐。揚げ豆腐の代わりに湯豆腐を選ぶこともできたらしいが、地元に住むLiさんのチョイスに従う。冷奴はとろりとこくがあり、口の中ですっとはかなく消えていく。揚げ豆腐は口に含むと熱い汁がほとばしり、小籠包のような感覚で、香りが鼻に抜ける。これは、未体験の味だ。いずれも、伏見らしいすっきりとしてほんのり甘い味わいの「蒼空」、とくに純米ひやおろしに合う。
このあと、一口ご飯、そしておからを使った小鉢のラーメンが出て、最後のデザートは豆乳を使った杏仁豆腐。食べ終わる頃には、ちょうど日本酒もなくなった。充実したコースで、わずか一五〇〇円。住所は聞きそびれたが、藤岡酒造のすぐそばだから、調べればすぐ分かるはず。ただし不定休で要予約である。(2009.12.13)

京都市伏見区今町672あたり
075-621-5611