橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中井「楽屋」

classingkenji2009-11-24

中井駅のすぐそば、踏切に面した場所、ちょっと雑然とした雰囲気の入り口から階段が二階へと続いている。貼り紙には「中井駅にいちばん近い居酒屋です。ワンコイン以下のお酒各種、酒菜40品目以上。区内町御用達 酒菜研究所」とある。
階段を上ってみると、インテリアは洋風で、古い喫茶店か洋食屋のような雰囲気だ。入って奥にカウンター、右側にはテーブルがいくつか、入ってきた道路の方へと並んでいる。カウンターに座ってメニューをみるが、確かに安い。生ビール(ではないが)は発泡酒のサッポロ生搾りだから、小二五〇円、中四八〇円はさほど安くないが、何とヱビスの中瓶が三五〇円、キリンラガーも同じく三五〇円。こうなると酎ハイ類の三五〇円が高く感じる。焼酎のボトルが一六〇〇円からで、思わず注文しようかと思ってしまった。料理は冷奴と、鳥豚野菜と揃った串焼きの一〇〇円がいちばん安く、刺身も二五〇円から。二五〇円の秋刀魚は、おろし生姜が市販品だったものの、刺身そのものは十分美味しかった。
客は、なぜか高齢者が多い。男女問わず、まるで地元高齢者の同窓会のたまり場だ。注文を取りに来るのも、料理が出てくるのも少々時間がかかるが、ここまで安いなら文句はない。喫茶店的インテリア以外は、まるで下町大衆酒場。これから帰りにときどき寄ってみようかという気になる。沿線の人は、寄ってみて損はない。(2009.10.30)

新宿区中落合1丁目20-16
16:00〜24:00 隔週土休