橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

烏森神社付近

classingkenji2009-05-06

今日は、ふと思い立って新橋へ。
新橋は、東京でも最大級のヤミ市があった場所である。ヤミ市といっても、物資を売る店よりは飲食店が中心で、文字通り最大のヤミ市盛り場だった。ヤミ市起源の居酒屋・商店街は、一九六〇年代まで残った。その多くは、新橋駅前ビルとニュー新橋ビルに移転したが、今でも周辺には、ヤミ市の雰囲気が残る。それがいちばん濃厚なのは、烏森神社周辺だろう。露店時代の地割りのまま建て替えられたのではないかと思われる小さな店や、ミニ雑居ビルが密集している。常連客にとっては親戚の家のようなものだろうが、一見客にとっては、これほど匿名的な空間もない。(2009.5.1)