橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

千歳船橋「鳥貴族」

classingkenji2009-02-13

関西資本のチェーン店だが、最近になって東京に出店を始めた。特徴は、すべてが二八〇円均一であること。メインのやきとりは、二本二八〇円。というと、あまり安くないように思えるが、たいがいのものは普通の二本分くらいのボリュームがある。とくに「貴族焼」と称するモモ焼は、お得。セセリやハツも、ボリュームたっぷりだった。牛串と豚バラ串もあるが、豚バラは普通の大きさで、あまりCPがよくない。お好み焼き風つくねは、鳥のつくねの串焼きにソースとマヨネーズをかけ、鰹節を盛ったもので、アイデア料理だ。酒もすべて二八〇円だが、キリン一番搾りの中ジョッキ二八〇円は安い。ホッピーもあるが、ボトルを出していたのでは採算が合わないから、「当店では作って提供しています」というのはしかたがないところ。注文してみると、気の抜けた味だった。いまやホッピーはビールより割高という実態を象徴している。本格焼酎も数種類あって二八〇円だが、量は六〇ミリリットルと少ない。
カウンターが数席あるものの、テーブル席中心で、切り出しただけの白木の板をメインにしたインテリア。これはこれで、飾り気がなくていい。しかし、店員のオペレーションがまだこなれていない。料理を別のテーブルにもっていったり、ドレッシングをかけずに野菜を出したり、やたらと時間がかかったり。やきとりの味は、チェーン店にしては悪くないし、生ビールが安いから、使える店だと思うのだが。中央線と西武線沿線を中心に、現在都内に二〇店舗とのこと。(2009.2.10)

世田谷区桜丘2-29-14
18:00〜2:00(LO 1:30) 無休
http://www.torikizoku.co.jp/index2.html