橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

世田谷「串かつ 田中」

classingkenji2009-02-08

最近、忙しくてあまり外出ができない。近場に何か、新しい店がないかとネットで情報収集していて、みつけたのが、この店。東急世田谷線という、もともとは玉電の一部だった小さな路線の世田谷駅で降り、世田谷通りに出ると、左方向の交差点にホッピーの提灯がみえる。東京でも増えてきた串かつの店だが、世田谷の中心部にあって庶民的な店構え。大きなガラス張りで、外から丸見えのところは人によっては気になるだろうけれど、入りやすいのは間違いない。カウンターは五席ほどしかないが、店内はけっこう広く、テーブル席はゆったりしている。
肝心の串かつは、キャベツサービス、二度付け禁止のお決まりのスタイルで、一本一〇〇円から二〇〇円。ホッピーセットが三九〇円(中二〇〇円、外三〇〇円)と、世田谷にしては安い。中生三九〇円というのも、良心的。本格焼酎が何十種類(公称一〇〇種類らしいが)か揃っていて、すべて四九〇円とのこと。串かつは、大阪並みに素早く揚がってきて、普通に美味しい。牛スジのどて焼きも、本格的。
串かつは大阪の庶民の味だから、東京に進出すればホッピーと出会うのは必然だが、この店では、まるで一〇年も前からそうだったかのように、自然に共存している。世田谷線沿線住民には、うれしい店だろう。知る人ぞ知る名店「酒の高橋」はすぐ近所。二軒セットと考えれば、遠出していく価値があるかも。(2009.2.3)

世田谷区世田谷1-16-16 安藤ビル 1F
17:00〜1:30(土・日・祝は16:00〜) 無休