橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

正月の銀座ライオン

classingkenji2009-01-14

今日は、今年はじめて都心に出た。まずは明治神宮へ行き、初詣、ではなく、初詣風景を観察。四日だというのに、まだ人出がかなり多い。賽銭を投げ入れる先は、賽銭箱ならぬ巨大なビニールシート。賽銭を投じたあとの出口がないので、終わった人は人波をかき分けかき分け横に出る。その人の流れが絶えず揺れ動き、まるで澱みの水の流れのようだ。
その後は、銀座へ。今年初の生ビールは、「銀座ライオン銀座七丁目店」である。ある時期は、毎年元旦にここでビールを飲むのが習慣だった。元日から店を開けるようになったのは、一五年ほど前からだと思う。最初は人が少なかったが、最近ではほとんど満員になる。一月一一日の東京新聞に、サッポロライオン社長の記事が載っていた。フリーター出身社長奮闘記という見出しで、「従業員は家族。家族を守るために数字を残す」、人件費を削って利益を出すのは「守るべきものを間違えている」と言い切る。サッポロライオンの売り上げは〇四年から連続して伸び続け、〇七年は史上最高になったとのこと。外食不況の中で、とくに安くもない店が、しかも斜陽のサッポロ系列がなぜ伸びるのか。ちゃんと調べてみたいテーマである。(2009.1.4)