橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

下北沢「よっちゃん」

classingkenji2008-12-18

ある人から教えられて、仕事の帰りに寄ってみることにした。下北沢の南口を出て、坂道を五分ほど下ったところ、道の左側に一〇〇円ショップのダイソーがあるが、その反対側の小路を入ったところの右側。ビルの地下に、「大衆酒場 よっちゃん」がある。店内は木目を生かしたコの字型カウンターで、基本的には立ち飲みだが、右側には椅子がいくつかある。入ったときは、七〇代と思われるお年寄りが三人、この椅子席で和気あいあいと飲んでいて、そろそろ席を立とうかというところ。店の人に、いつできたの、いい店だね、などと声をかけている。若い男性と女性が二人で切り盛りする店である。
まずは、ビールをいただく。サッポロ中生が四五〇円、サッポロラガー大瓶が五五〇円。立ち飲みとしてはとくに安いわけではないが、店の規模が規模だけに、適正価格といったところ。その他の酒は、日本酒はコップで三〇〇円、甲類焼酎は二五〇−三〇〇円、本格焼酎は五〇〇円、サワー類は四〇〇円が中心。ホッピーがないのは残念だが、今回の値上げで、ホッピーは新規開店の店にとって必ずしも魅力的な商品でなくなっているので、しかたがないかもしれない。食べ物メニューは、一〇〇円の落花生や柿の種からはじまって、魚肉ソーセージ一五〇円、板わさ、しらすおろし二五〇円、ハムカツ三五〇円、焼うどん五〇〇円など、簡単なおつまみから食事まで。料理は、店の奥でオーダーごとに女性が作っているから、少し時間はかかるが出来たてが届く。「ホルモンかす」(四〇〇円)などという珍しいものがあって、注文してみたら、濃厚な内臓食文化の味だった。
以前は他の場所で営業していたが、最近ここに移ってきて立ち飲み屋になったとのこと。若者の街・下北にあって、ちょっと大人の感じの、しかも匿名性の支配する大規模立ち飲み屋とはちがって、店の人と常連客が仲良くなってしまいそうな立ち飲み屋である。(2008.12.7)

世田谷区北沢2丁目17あたり
15:30分〜11:30 水休