橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

村上春樹『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』

この夏、アイラ島へ行って、何カ所かのディスティラリーを見学してきた。もともとアイレイウイスキーは好きだったのだが、それ以来ますます好きになり、今では食後から寝るまでの間の酒は、たいがいウイスキーである。ロックでなめるように飲む。これまでは、のんべんだらりとビールやら酎ハイやらを飲み続けていたから、酒量もだいぶ減ったようで、なかなか健康的だ。
これは村上春樹が、妻の村上陽子さんとともにウイスキーを求めてを旅した記録。写真は、陽子さんによるものである。前半はアイル島のアイレイモルト、後半はアイルランドアイリッシュだが、前半の方がずっと出来がいい。生ガキにアイレイモルトをかけて食べる話は垂涎もので、先日実際にやってみたが、たしかにいい食べ方である。「子供が生まれると、人々はウイスキーで祝杯をあげる。人が死ぬと、人々は黙してウイスキーのグラスを空ける。それがアイラ島である」という締めくくりも、気が利いている。
現在は文庫も出ているが、こういう本は大きなサイズで読みたいものである。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

もし僕らのことばがウィスキーであったなら