橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

恵比寿「恵比寿横丁」

classingkenji2008-11-06

JRの恵比寿駅、「西口(東側)」というよくわからない名前の出口から駒沢通りに出て、右へ。次の交差点の向かい側にみえてくる。古いヤミ市起源の横丁飲食街のような外観で、通りかかったサラリーマン三人組が「おっ、渋い。新橋みたいだなぁ」といって、吸い込まれていった。
たしかに、もともとはヤミ市起源の「山下ショッピングセンター」跡地なのだが、実は、(株)ジェイオフィスのネオサポート事業部がプロデュースした、新規開店ばかりの飲食店街。あの「トロ函」も「戎参」も、この会社のプロデュースである。間口の狭い店ばかり十三店が入り、真ん中あたりに共同トイレがあるところなどを含めて、横丁飲食街のスタイルを模倣している。業態は、焼き鳥、中華、おでん、魚料理などいろいろで、安い店もあれば、まあまあの値段の店もある。
もともと恵比寿は、ガーデンプレイスのおしゃれな雰囲気とは裏腹に、ヤミ市起源の商店街が点在する場所だが、その再生の方向を指し示した、ひとつのモデルケースだろう。もっとも、再模倣するのは可能だろうから、プロデュースした会社ばかりに任せておく必要はない。店については、また次回。(2008.11.3)

渋谷区恵比寿1-7-4
http://www.ebisu-yokocho.com/index.html